ビニール売上43年ぶりに10億ドル突破——Z世代が「モノとしての音楽」を買う理由

米国の音楽産業は、2025年に史上最高の収益を記録した。その中でも注目すべきは、ビニールレコードの売上が1983年以来初めて10億ドルを突破したことだ。Taylor Swiftがこのブームを牽引している。ストリーミング全盛の今、なぜ「モノとしての音楽」が再び価値を持つのか。日本のクリエイターがこのトレンドから「稼ぐ」ヒントを探る。

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米国のビニール売上が43年ぶりに10億ドル超え

Recording Industry Association of America (RIAA)の年次レポートが、米国の録音音楽業界の過去最高収益を明らかにした。2025年の売上は115億ドルだ。プレミアム有料ストリーミング収益は6.8%増加し、58.8億ドルに達した。さらに特筆すべきは、ビニールレコードの売上である。ビニールは19年連続で成長を続け、1983年以来初めて10億ドルを突破したのだ。具体的な数字は10億4290万ドルに上る。これは前年の9億5440万ドルから7.9%の増加だ。販売枚数も4340万枚から4680万枚へと着実に伸びている。このビニール市場の復活を強く牽引するのは、トップアーティストたちの力だ。Taylor Swiftの2025年のアルバム「Life of a Showgirl」は、ビニールだけで約160万枚を売り上げた。彼女の「Lover (Live From Paris)」も16.6万枚を記録し、年間9位に入った。Luminateのデータがそれを裏付ける。Sabrina Carpenterの直近2作も約60万枚のビニールを販売している。米国は世界のビニール売上の半分以上を占める、巨大な市場になっている。

「モノとしての音楽」がZ世代に響く理由

ストリーミングが音楽消費の主流である現代において、ビニールレコードの売上急増は一見不思議に映るかもしれない。しかし、この現象の背景には「モノとしての音楽」が持つ独自の価値があるのだ。RIAAのMatt Bassは「ファンはこれまで以上に多様な方法で音楽を消費している」と指摘する。ストリーミングで手軽に音楽を享受する一方で、熱心なファンはアーティストとの深いつながりを求めている。彼らは単なる音源ではなく、アートワーク、歌詞、ライナーノーツ、そして物理的な感触を含む「体験」に価値を見出すのだ。Z世代は、デジタルネイティブだからこそ、あえてフィジカルなアイテムを所有することに新鮮さと特別さを感じる傾向がある。Taylor Swiftは、この心理を巧みに突いたD2C戦略を展開する。限定版のビニールや特別な特典を組み合わせることで、ファンにコレクターズアイテムとしての価値を提供するのだ。これは、高単価な商品販売を可能にし、アーティストの収益源として機能する。ストリーミング収益とは別の軸で、熱量の高いファンから直接的な収益を得る新しいビジネスモデルが成立している。

X(Twitter)での反応

「価格が上がっているだけ」という見方もある

Redditのr/vinylでは冷静な声も多い。「1983年比で枚数ではなく金額が増えたのは、レコードの値段が4〜6倍になったからでは」(246 upvotes)、「10億ドルといっても今の価格だと18枚分くらいの話」(142 upvotes)といった指摘が上位に並んだ。実際、新品のLPは1枚3,000〜5,000円が当たり前で、1983年当時の実質価値に換算すると数字の印象は変わる。RIAAの発表した枚数ベースの数字(4,790万枚)はより実態を反映しており、2007年の約88万枚から19年連続増という趨勢そのものは揺るがない。「バブルか実需か」という問いは残るが、Record Store Dayを筆頭にした限定リリース文化がファンの購買行動を毎年確実に動かしている現実は数字に表れている。


参考URL: https://variety.com/2026/music/news/taylor-swift-us-vinyl-sales-1-billion-1236690069/


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