AIの進化は、音楽制作の現場だけでなく、業界のビジネスモデルそのものを大きく変えようとしている。今、世界の音楽業界では、生成AIプラットフォームとのライセンス契約締結が相次ぐ。その一方で、AIを悪用したストリーミング詐欺で800万ドルもの不正ロイヤリティが奪われる事件も発生した。これらは、音楽で生計を立てるクリエイターや事業者が、今後どのように稼ぎ、自身の権利を守るべきかを根本から問い直すものだ。
音楽業界を揺るがす二つの大きな動き
音楽業界は現在、AI技術に起因する複数の課題に同時に直面している。特に注目すべきは、AIライセンス契約の本格化と、AIを用いたストリーミング詐欺の増加である。まず、AIライセンス契約に関しては、大手レーベルと生成AIプラットフォームの間で具体的な合意が生まれている。
Universal Music Group(UMG)はUdioとの著作権訴訟を和解し、ライセンスを受けたAI音楽制作プラットフォームを構築することに合意した。さらにUMGを含む三大レーベルは、Klayともライセンス契約を締結している。SpotifyもUMGと提携し、Premium会員向けにAIで楽曲をリミックス・カバーできる機能を発表した。
出版サイドでは、National Music Publishers’ Association(NMPA)がUdioとKlayとの業界初の出版社向けAIライセンス契約を公表している。しかし、ソングライターへの具体的な支払いメカニズムは未公開であり、既存のストリーミング支払いにおける報酬格差が懸念されている。一方で、AIを悪用したストリーミング詐欺も深刻化している。米国のマイケル・スミス氏は、AIで生成した数十万曲をSpotify・Apple Music・Amazon Music・YouTube Musicにアップロードし、ボットで数十億回ストリーミングさせて1,000万ドル超のロイヤリティを不正取得したとして、ワイヤー詐欺の共謀罪を認めた。米司法省(SDNY)によると、本人が没収に同意した額は約809万ドル(約12億円)にのぼる。
なぜ今、これらの問題が表面化したのか
AIライセンス契約の動きは、生成AIの技術が普及し、多くのソングライターがAIを創作プロセスに取り入れ始めたことが背景にある。NMPAのCEO、デイビッド・イスラエリテ氏は、ソングライターの仕事が無許可で利用され、報酬もないまま新たな作品が生み出されることへの強い懸念を示している。これは、既存の著作権管理の枠組みでは対応しきれない状況が生まれていることを示唆している。
同時に、著作権管理団体(PROs)への不満も高まっている。例えばKobalt MusicのCEOは、PROsが「エコシステムに価値を提供しないなら排除されるリスクがある」と厳しく指摘した。同社は、PROs経由の収入の30%が監査不可能だと主張しており、より正確な支払いを保証する直接ライセンスの必要性を訴えている。英国でも、エルトン・ジョンらがPRS For Musicに対し、透明性や精度に関する見直しを求めた。
AIストリーミング詐欺の急増は、AIによるコンテンツ生成の容易さと、ボットを用いた不正な再生回数操作の巧妙化が原因である。わずかな労力で大量の楽曲を作成し、それを自動で再生させることで、プラットフォームから不当な収益を引き出すことが可能になった。この問題は、DSPの収益分配モデルや不正検出システムの脆弱性を浮き彫りにしている。
日本のクリエイターが今すぐ「稼げる」ヒント
AIライセンス契約の波は、確実に日本にも押し寄せる。日本のクリエイターは、自身の楽曲がAI学習データとしてどのように扱われるのか、またAI生成物からどのような報酬が得られるのかを明確にする契約内容を注視するべきだ。既存の著作権管理団体との関係性や、直接ライセンスの可能性も視野に入れる必要がある。
ストリーミング詐欺の問題は、正当なクリエイターの収益を圧迫する。DSP側での監視強化が進む中で、不正な手段に頼らず、純粋な創作活動とプロモーションでファンを獲得することが、長期的な稼ぎにつながる。AIツールを創作プロセスに活用する際は、それが悪用されないよう倫理観を持つことが重要だ。
クリエイターは、AIを味方につけ、新たな創作や収益機会を探る一方で、自身の権利と稼ぎを守るための知識武装が求められる。例えば、自身の楽曲をD2Cで販売したり、独自のプラットフォームで展開したりするなど、AI時代に対応した収益モデルの検討も欠かせない。
参考URL:
- https://thenextweb.com/news/music-industry-ai-deals-streaming-fraud-royalties-pro-crackdown




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