ストリーミングによって音楽業界の売上は回復基調にある。しかし、その成長の裏で、クリエイターやレーベルがファンとの直接的な関係を失っている事実は見過ごせない。顧客所有権という視点から、業界の現状と、クリエイターがこれから稼ぎを最大化するためのヒントを解説する。
ストリーミング成長の裏で失われたもの
音楽業界はここ10年、ストリーミングの台頭とともに売上を回復させてきた。しかし、これは「アクセス」を最適化する戦略の結果だ。その代償として、ファンに対する「所有権」を失っている。業界はリスニング行為を収益化することには長けた。だが、ファン個人の熱量や「信仰」を収益化するシステムを構築できていない。
例えば、あるアーティストの作品を熱心に40時間聴くスーパーファンも、たまに聴くカジュアルリスナーも、プラットフォーム上ではほぼ同じ商業的価値しか生み出さない。彼らの熱意は収益に反映されにくい。これは発見の問題ではない。価格設定の問題でもない。ファン行動の持つ本来の価値を捉えるシステムの失敗である。
プラットフォームが顧客を「再販」する構造
音楽業界は、危機的状況下でストリーミングプラットフォームに頼らざるを得なかった。安定した収益、グローバルな規模、海賊版リスクの軽減と引き換えに、透明性の低い契約を受け入れたのだ。データへの限定的なアクセスや、顧客ジャーニーを追跡する能力を失った。
業界は「収益ストリーム」を重視する。しかし、プラットフォームは「顧客ジャーニー」で考える。この認識のギャップこそが、価値がプラットフォームへ移動し、そこに留まる原因だ。ロイヤリティの多くはプロラタ方式で支払われる。さらに、日々何万ものAI生成トラックがアップロードされ、ロイヤリティプールが希薄化している。
レーベルやマネージャーは、マーケティング費用をかけてファンを「発見」する。プラットフォームは、その発見を広告で収益化する。さらに、レーベルやアーティストは、同じファンにプラットフォーム内で再度リーチするため、プロモーションツールに費用を支払うことになる。ファンはプラットフォーム外のチケットやコマースで購買活動をする場合が多い。そして、そこでもプラットフォームがアフィリエイトとして手数料を取る。同じお金が何段階も課税され、同じファンが何度も「再販」されているのだ。
日本のクリエイターへの示唆
この「顧客所有権問題」は、日本のクリエイターにとっても他人事ではない。プラットフォームがユーザーを囲い込み、そのデータを独占する状況は、あなたの音楽キャリアを左右する重要な問題だ。
稼ぎを最大化するには、プラットフォーム依存から脱却する必要がある。D2C戦略への投資、CRM(顧客関係管理)システムの導入は不可欠だ。自分自身のプラットフォームやコミュニティを構築し、ファンとの直接的な接点を持つ。そこで得られる顧客データを活用し、スーパーファンを特定し、彼らが本当に求めている体験やプロダクトを提供する。これは、長期的に安定した収益源を確保し、クリエイターとしての自立性を高めるための鍵となるだろう。
参考URL:
- https://www.musicbusinessworldwide.com/the-music-industry-doesnt-have-a-streaming-problem-it-has-a-customer-ownership-problem/




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