SpotifyとAmazon Musicが採用したサブスクリプションの「バンドル戦略」により、音楽出版社と作詞作曲家が約5億ドル(日本円で約780億円)もの価値を失ったと米国の音楽出版社団体NMPAが警告している。これは個々のクリエイターの収益に直結する。なぜこのような事態が起きたのか、日本のクリエイターは何に備えるべきかを解説する。
SpotifyとAmazon Musicで何が起きたか
米国の音楽出版社団体NMPA(National Music Publishers’ Association)は、SpotifyとAmazon Musicのバンドル戦略により、2024年以降、音楽業界が約5億ドルもの価値を失ったと発表した。両サービスは特定のサブスクリプションプランを「バンドル(同梱)商品」として再分類。これにより、既存の米国規制下で機械的著作権料率を下げて支払う動きを見せている。NMPAはこれを著作権料の不当な減額であると指摘する。
NMPAの顧問であるダニエル・アギーレ氏によると、Spotify単独のバンドル戦略だけで、その初年度に推定2.3億ドルの損失が発生している。さらにAmazon Musicが同様のモデルを採用したことで、音楽出版社の収益減少が加速しているのが現状だ。NMPAのデイビッド・イスラエリートCEOは、この問題は出版業界最大の財政的課題の一つであり、このままバンドル戦略が続けば、今後数年間で数十億ドルの損失につながる可能性があると警告している。NMPAは、現状が維持されれば2032年までに損失が31億ドルを超える可能性があると試算している。
なぜ著作権料が減ってしまうのか
この問題の核心は、Spotifyが2024年にオーディオブックをPremiumサブスクリプションプランに同梱したことにある。出版社や作詞作曲家は、この変更が著作権料支払いを大幅に減少させると主張し、NMPAはこれまでこの慣行に異議を唱えてきた。ストリーミングサービスが音楽以外のコンテンツを主要な音楽サブスクリプションプランに含めることで、収益分配モデルが変化する。
具体的には、バンドルされたプラン全体の収益から、音楽コンテンツに割り当てられる収益の割合が小さくなる。機械的著作権料は、その音楽部分に割り当てられた収益に基づいて計算されるため、音楽コンテンツの割り当てが減少すれば、それに伴って著作権料も減る。これは、既存の著作権料に関する規制やライセンス契約の「抜け穴」を突いた形だ。音楽以外のコンテンツ価値を付加することで、見かけ上はユーザーへの提供価値を高めつつ、一方で音楽クリエイターへの分配額を減らすという矛盾した事態が発生している。
日本のクリエイターへの示唆
この問題は、米国だけの話ではない。海外での動きは、数年後の日本の音楽業界にも影響を及ぼす可能性が高いからだ。現状で日本の主要DSPがすぐにオーディオブックとのバンドルを開始するとは限らないが、ポッドキャストなど、音楽以外のコンテンツをサービスに組み込む動きはすでに活発だ。これにより、サブスクリプション収益の分配方法が変化し、音楽クリエイターへの還元率が低下するリスクは常に存在する。
日本のクリエイターやアーティストは、自身の著作権とそこから発生する収益の仕組みについて、より深く理解しておく必要がある。また、DSPとの契約内容や、業界全体の収益分配モデルの変更について常に情報をアップデートし、自身の権利が不当に侵害されないよう目を光らせるべきだ。
- 著作権の知識を深め、契約内容を精査する
- D2Cやファンエコノミーを通じて、プラットフォームに依存しない収益源を確保する
- 音楽業界団体や同業者との連携を強化し、共同で権利を主張できる体制を構築する
このような戦略的な動きが、これからの音楽クリエイターには求められるだろう。
参考URL:
- https://www.celebrityaccess.com/2026/06/11/music-publishers-group-warns-streaming-bundles-have-erased-500m-in-value/




コメント