音楽制作プラットフォームのSpliceは、生成AIのElevenLabsと戦略的提携を発表した。この協業により、SpliceはAIを活用した新しい音楽制作ツールの開発を加速させる。クリエイターは、より高度なAI機能を自身のワークフローに組み込み、音楽制作の可能性を大きく広げることが可能となるだろう。
SpliceがAI音楽制作に本腰を入れる
SpliceはElevenLabsとの提携により、AI音楽制作ツールの開発を強化する。具体的には、ElevenLabsが持つ基盤音楽モデルをSpliceのプラットフォームに統合する計画だ。この提携は5月19日に発表され、年内には新世代のAIパワードクリエイティブツールがリリースされる予定である。
両社は「アーティストへの尊重と公正な報酬」を基盤としたAIツールの構築を約束している。SpliceのCEO、Kakul Srivastava氏は「AIの第2波ではクリエイターが最優先だ」と述べた。続けて「責任ある製品をゼロから構築している」と強調している。ElevenLabsのCEO、Mati Staniszewski氏も「我々のモデルは商用利用可能なスタジオ品質のオーディオを提供する」とコメント。Spliceのワークフローにこれらを組み込むことで、アーティストに直接機能を提供できるとしている。
急成長するElevenLabsとSpliceのAI戦略
今回のElevenLabsとの提携は、SpliceがAI分野で積極的に展開する一連の動きの一つである。Spliceは2026年1月、AIを活用した音声制作プラットフォームKits AIを買収した。さらに2025年12月には、ユニバーサルミュージックグループ(UMG)と提携し、次世代のAIパワード音楽制作ツールの共同開発を進めると発表している。
Spliceは2026年4月、AI搭載ツール「Variations」「Craft」「Magic Fit」を発表した。これらは既存の300万以上のライセンス済みサンプルと生成AIを組み合わせるものだ。オリジナルサンプルのクリエイターに対し、そのサウンドが新たな素材の生成に使われた際に報酬を支払う仕組みが特徴である。
一方のElevenLabsは2022年設立の急成長企業だ。元々はテキスト音声変換技術で知られ、その後は音楽・効果音・ダビング・会話AIへと事業を拡大した。報道によれば、2026年2月にシリーズDで5億ドルを調達して評価額は110億ドルに達し、同年5月初めには年間収益が5億ドルを超えたことを明らかにしている。
日本のクリエイターはAIをどう「稼げる」ツールにするか
今回のSpliceとElevenLabsの提携は、日本の音楽クリエイターにとっても大きな示唆を与える。特に重要なのは「責任あるAI」という共通認識だ。海外では、AIが既存の作品を学習する際の権利問題や、クリエイターへの公正な報酬が常に議論の中心にある。Spliceが既存のサンプルクリエイターに報酬を支払うモデルを導入したことは、AIを「奪うツール」ではなく「稼げるツール」として機能させるための重要な一歩と言える。
日本のクリエイターは、この動向から学ぶべき点が多いだろう。
- 既存D2Cチャネルとの連携: Spliceのようなプラットフォームは、AIツールを通じて生成された楽曲やサウンドを、直接ファンに届けたり、他のクリエイターと共有したりするD2Cのハブとなる可能性がある。
- カタログ資産の再評価: 過去に制作した楽曲やサウンド、ボーカル素材などがAIの学習データとして活用され、新たな収益源を生み出す機会が生まれるかもしれない。
- AIを共同制作者として捉える: AIは単なる自動化ツールではなく、人間の創造性を刺激し、新たなアイデアを生み出すパートナーと捉えることで、制作プロセスが大きく変わる。
AI技術の進化は止まらない。しかし、その根底には常にクリエイターへのリスペクトと収益還元が求められる。日本のクリエイターも、AIを積極的に取り入れつつ、自身の作品と権利を守りながら、新しい収益モデルを模索する時期に来ていると言える。
参考URL:
- https://www.musicbusinessworldwide.com/splice-partners-with-elevenlabs-to-power-ai-music-creation-tools/




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