プロミュージシャンの78%がAIツールを使っている──そう言われると「AIで曲を自動生成している」と想像するかもしれない。実態は違う。Moises×Water & Musicが1,525人を対象に行った調査が、その実像を数字で示した。
プロの78%がAIを活用。しかし「生成」より「編集」である
AI音楽テック企業のMoisesは、Water & Musicとの共同レポートを発表した。これは1,525人のミュージシャンを対象にした、AI利用の実態調査である。その結果は驚きだ。プロミュージシャンの78%が既にAIツールを利用している。趣味で音楽をする人々の利用率は60%である。この数字は、AIがプロの現場に深く浸透している事実を明確に示している。
彼らが最も活用するのは「ステム分離」機能だった。AI利用者の71%がこの機能を使っている。一方で、AIに「フル楽曲を生成させる」という利用は24%に留まる。このデータが示すのは、AIがゼロからの創作よりも、既存素材の編集や加工に使われている現状だ。
AIツールへの支払い状況も明らかになった。プロミュージシャンの21%が月50ドル以上、25%が20〜49ドル、28%が1〜19ドルを支払う。有料サービスとしてAIツールが定着している証拠だ。ただし、回答者の約80%がMoisesユーザーだった点には留意が必要である。
クリエイターはAIを「アシスタント」として使いこなす
AIツールの「ステム分離」がこれほど支持される背景には、その高い実用性がある。既存の楽曲からボーカルやドラム、ベースなどを個別に分離する機能だ。これはリミックス、カバー制作、練習用音源の作成、あるいは特定のパートの抽出に極めて有効である。クリエイターは、AIが生成した不完全な楽曲をゼロから修正する手間を省ける。むしろ、自身のアイデアを活かしながら、作業効率を上げる「編集」ツールとしてAIを活用している。
AIが完璧な音楽を自動生成する未来はまだ遠い。しかし、人間の創造性を拡張するアシスタントとしての価値は既に確立されている。これは、AIが人間の仕事を奪うのではなく、協調する関係性を示唆する。
また、OC&C Strategy Consultantsの別のレポートも、AI音楽市場の多様なトレンドを指摘している。AIアシスト型、AI生成型、ディープフェイクといった分類がある。「編集」用途の普及は、AIアシスト型が市場の主軸になっている証拠だ。クリエイターは、AIの強みを理解し、それを自身の制作プロセスに組み込む術を見つけている。
日本のクリエイターへの示唆──「生成」より「編集」から始める
この調査の数字を見ると、AIとの付き合い方の入口が見えてくる。フル楽曲の自動生成(24%)より、ステム分離(71%)から始めるほうが現実的だ。
具体的な使い方としては、カバー曲のオケ抽出、リミックス用のボーカルトラック分離、練習用インスト作成など。MoisesやLALALなど月額数百円から使えるツールがすでにある。「AI音楽」というと大げさに聞こえるが、実際のプロの使い方はそれくらい地に足がついている。
プロの21%が月50ドル以上をAIツールに払っているという事実は、投資対効果が成立しているということだ。制作時間が半分になるなら、月額2,000円は安い。まず1ツールを1ヶ月試す、それだけで始められる。
参考URL: https://musically.com/2026/03/23/moises-and-occ-publish-new-reports-exploring-ai-music-trends/

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