音楽のストリーミング再生数を増やし、収益を最大化するにはDSP向けメタデータ最適化が不可欠である。正確なメタデータはロイヤリティの確実な分配に繋がり、DSPのアルゴリズムに適切に認識されることでリスナーへのリーチも拡大する。
本記事では、公式情報に基づきその重要性と具体的な方法を解説する。
結論:何をすべきか / 何を選ぶか
音楽のストリーミング再生数を増やし、収益を最大化するためには、DSPに提出するメタデータの正確な登録が必須である。これにより、ロイヤリティの適切な分配が保証されるだけでなく、DSPのアルゴリズムが楽曲を正確に認識し、適切なリスナーにレコメンドする機会が増える。
特に重視すべきポイントは以下の通りである。
- ISRC、ISWC、IPI番号といった識別子の適切な管理
- 楽曲情報や共同作曲者情報の詳細な登録の徹底
- DSPが提供するキャンペーンツールの積極的な活用と効果測定
公式ドキュメントが定める基本ルール
メタデータはデジタル形式の音楽ファイルに埋め込まれたライナーノーツ情報だ。楽曲名、アーティスト名、アルバム名に加え、リリース年、レーベル、プロデューサー、ISRCやISWCといった識別子が含まれる。
この情報は会計処理に用いられ、オンラインでの音楽使用によって生じるロイヤリティの適切な分配に不可欠である。そのため、音楽アップロード時の正確な情報登録が極めて重要である (出典)。
ISRC(国際標準レコーディングコード)
ISRCは音源またはミュージックビデオを識別する英数字コードである。このコードによって音源が自動的に識別され、ロイヤリティの適切な分配が可能になる。
ISRCは楽曲の「デジタルフィンガープリント」として永久に不変であるべきものであり、現在または将来の配信事業者が誰であっても同じコードを使用する (出典)。
ISWC(国際標準音楽作品コード)
ISWCは、音源ではなく音楽著作物(楽曲そのもの)を識別するための国際的なコードである。このコードによって、音楽著作物のほか、ソングライターや作曲家、音楽出版社が特定される (出典)。
著作権管理団体(CMO)は、複雑な識別システムと監視システムを利用してソングライターの作品の使用状況を追跡している。ISWCは作品を特定するための重要な識別子であり、主要なメタデータはIPI(利害関係者情報)番号と紐付けられる (出典)。
Spotifyのロイヤリティポリシー
Spotifyでは、新しいロイヤリティポリシーが施行されている。レコーディングロイヤリティは、一定の再生数に達しているトラックに対してのみ発生する仕組みである。
このモデルは、アーティストに支払われていない少額の収益を適切に分配し、ストリーミングを主な収入源としているアーティストへの支払いを増やすことを目的としている (出典)。
実務上のチェックリスト/手順
効果的なメタデータ最適化と再生数増加のための手順は以下の通りだ。
ステップ1:基本情報の正確な登録を徹底する
- 楽曲名と各ライターの名前は、関係者間で合意した正しい綴りで入力する
- 綴りミスは支払い漏れの原因となる
- 共同作曲者を登録し、権利分割の割合を明確に記載する
ステップ2:国際識別子を適切に管理する
- すべてのライターのIPI番号を把握し、自身のIPI番号も改めて確認する
- これにより、マッチング処理がより速く正確に行われる
- 音源にはISRC、音楽著作物にはISWCが適切に割り当てられているか確認する
- ISRCは不変であるため、発行主体がそのコードの権利を恒久的に帰属させることを必ず確認する
ステップ3:著作権管理団体(CMO)へ加入し楽曲を登録する
- 所属地域のCMOに加入する
- 楽曲をCMOに確実に登録する。登録を行わないと潜在的なロイヤリティを受け取れない
- 登録状況は、お住まいの地域のCMOのデータベースで確認できる
ステップ4:DSPが提供するプロモーションツールを活用する
- SpotifyのCampaign Kitに含まれるプレイリストのピッチング、Discovery Mode、Marquee、Showcaseなどの音楽専用キャンペーンツールを活用する
- これらのツールはリスナーに広くリーチし、ファンを増やすために設計されている
- ストリーミングやエンゲージメントへの効果も測定できる
ハマりどころと回避策
未請求ロイヤリティの発生は、多くのクリエイターにとってハマりどころである。その主な原因と回避策を理解することが重要だ。
主な原因
- 登録情報の誤り、綴りのミス、不完全な情報
- 権利保有者間の登録内容の不一致、不正確なデータ報告
- 楽曲が登録されていない、またはISWCコードがストリーミングサービスに提供されていないケース
システム上には収益が存在していても、それを受け取るには適切に登録しておく必要があるのだ。
回避策
- 楽曲情報をできるだけ詳しく登録する
- 共同作曲の場合は著作権分配に合意し、その内容をスプリットシートなどで明確に記録する
- CMOのシステム上で既存の登録と照合し、一致する登録があるか確認する
- 過去のロイヤリティ申請については、所属CMOのガイドラインを確認する
- オンラインで未回収のロイヤリティを確認・請求できるシステムを活用する
Spotifyの新しいロイヤリティポリシーでは、一定の再生数に満たないトラックにはロイヤリティが発生しない。そのため、積極的に楽曲をプロモーションし、再生数を確保する戦略も必要である。
日本のクリエイター視点の補足
日本国内のクリエイターにとっても、ストリーミング収益の確保と再生数増加にはメタデータの最適化が欠かせない。各著作権管理団体(CMO)のウェブサイトで、楽曲登録やロイヤリティ請求に関する最新のガイドラインを必ず確認すべきである。
共同作曲の際は、作成過程で誰がどの部分を担当したか、また各当事者が何パーセントのロイヤリティを受け取る権利を持つかを明記したスプリットシートを作成し、関係者間で合意しておくことが重要だ。これは将来的なトラブルを防ぎ、公正な収益分配を確実にする。
また、デジタルディストリビューターのサービスを最大限に活用し、ISRCやISWCの割り当てを適切に行い、楽曲のグローバルな流通と追跡を確実にする必要がある。
参考URL:
- https://artists.spotify.com/ja/blog/glossary-of-music-industry-terms
- https://artists.spotify.com/ja/blog/cisac-songwriters-guide
- https://artists.spotify.com/ja/blog/modernizing-our-royalty-system
- https://artists.spotify.com/ja/blog/introducing-campaign-kit-campaign-tools-made-for-music
- https://artists.spotify.com/ja/campaign-kit




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