音楽業界におけるAI活用が加速している。しかし、その契約内容を巡って、クリエイター側の不満が噴出しているのだ。先日、31ものクリエイター団体がAI関連契約に対する公開書簡を発表した。これは、アーティストの権利と報酬に大きな変化をもたらす動きである。
レーベルのAI契約に31団体が待ったをかけた
2026年6月22日、31の主要クリエイター団体が共同で公開書簡を発表した。この書簡は、レコード会社や音楽出版社に対し、AI関連の契約においてクリエイターの同意・公正な報酬・透明性を求めるものだ。欧州音楽マネージャー連盟(EMMA)が中心となり、フィーチャード・アーティスト・コーリション(FAC)、アイヴァース・アカデミー、ミュージック・マネージャーズ・フォーラム(MMF)などが署名している。
書簡の背景には、レーベルがSunoやUdio、KLAY、SpotifyなどとAI利用に関する契約を締結している現状がある。しかし、これらの契約では、しばしばアーティストがデフォルトでAI学習に「オプトイン」させられていると指摘されているのだ。クリエイター側は、自身の作品がAIのトレーニングに使用されるにも関わらず、適切な協議や報酬がないことに危機感を募らせている。
彼らが求める主要なコミットメントは、以下の3つである。
- 真の同意
- 公正な報酬
- 契約内容の透明性
EMMAのエグゼクティブ・ディレクター、ジェス・パートリッジ氏は「AI契約が乱立する中で、アーティストやソングライターの権利の不当な取得に対する懸念が高まっている」と述べている。
「デフォルトでオプトイン」は同意ではない
なぜクリエイター団体は「同意」をこれほど強調するのか。それは、多くのアーティストやソングライターが、レーベルや出版社から送られてくるメールに起因する。AI利用に関する契約が既に締結された後、「AI関連の使用にデフォルトでオプトインされます」という通知を受け取ることが常態化しているためだ。
書簡は、このような「事後通知型のオプトアウト」は、真の同意とは言えないと主張している。作品や声、パフォーマンス、肖像権、創造的アイデンティティといった権利の主な保有者は、あくまでクリエイター自身である。そのため、契約条件が決定される前に、彼らが協議の場に参加することが不可欠であると訴えているのだ。
大手レーベルがSunoやUdioへの出資、Spotifyのリミックス製品など、AI関連の大型契約を進めることは、業界全体のスタンダードを形成してしまう。この動きは、独立系アーティストやソングライターにも直接的な影響を及ぼすものだ。今回の書簡は、クリエイター側がその交渉の場に自らを「書き戻そう」とする試みであると言える。
実際、この動きは単独ではない。先月には、全米音楽家組合(AFM)がユニバーサル・ミュージックとワーナー・ミュージックを提訴している。また、業界全体で約300ものAI契約が既に締結されているとする報告も同時期に出ている。
日本のクリエイターはAIとの向き合い方が変わる
この31団体による公開書簡は、日本のクリエイターにも大きな示唆を与える。欧米の主要レーベルとAI企業の契約は、世界の音楽業界のスタンダードを決定する可能性が高い。そのため、日本においても同様の契約モデルが持ち込まれる事態を想定しておく必要がある。
日本のクリエイターは、自身の作品がAI学習に利用される契約に署名する際、その内容を徹底的に精査しなければならない。特に「デフォルト・オプトイン」の条項には注意が必要だ。真の同意、公正な報酬、そして契約の透明性を求めて交渉する姿勢が重要である。これは、過去にストリーミング黎明期に発生した「不透明な分配問題」を繰り返さないための教訓ともなるだろう。
クリエイター自身が権利意識を高め、業界団体と連携することで、AI時代における公正な取引条件を構築できる。AIが音楽制作の強力なツールである一方で、クリエイターの権利と経済的利益が守られるよう、能動的に動くべき時が来ている。
参考URL:
- https://aimusicpreneur.com/ai-music-news/creator-organizations-ai-deals-consent-open-letter-2026/
- https://completemusicupdate.com/as-majors-sign-more-and-more-ai-deals-creator-organisations-come-together-to-demand-artist-and-songwriter-consent-fair-compensation-and-deal-transparency/




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