ソニーミュージックが、AIで生成されたディープフェイク楽曲の削除要請を加速させている。ハリー・スタイルズ、アデル、マイケル・ジャクソンといった人気アーティストの名を騙るコンテンツが大量に流通している状況だ。この問題は、AI技術の進化とともに、音楽クリエイターや業界が直面する権利保護の課題を浮き彫りにしている。
ソニーが26万件超のAIディープフェイク削除を要請
ソニーミュージック・エンタテインメントは、デジタルプラットフォームに対しAI生成ディープフェイク楽曲の削除要請を強化している。9月末時点で、その件数は26万件を超えた。これは3月末時点の13万5,000件から、わずか半年でほぼ倍増した数字である。
Q2とQ3(4月〜9月)の間には、月平均2万件以上もの要請が出された。削除対象となったアーティストには、ハリー・スタイルズ、アデル、ブリトニー・スピアーズ、クイーン、マイケル・ジャクソンなどが含まれている。ソニーはMusic Business Worldwideの報道に対して、「アーティストの権利を今後も行使し続ける。プラットフォームには迅速な対応と再出現防止を期待する」とコメントした。しかし、「これは上り坂の闘いだ」とも指摘している。
AIディープフェイクがもたらす「需要」と「抜け穴」
AIディープフェイク楽曲が増え続ける背景には、その生成が容易であることと「需要」がある。ソニーミュージック・エンタテインメントのデニス・クーカー社長は、「ディープフェイクの問題は需要主導型である」と説明した。アーティストが自身の音楽をプロモーションしている事実に、AIがつけ込んでいるという認識である。
プラットフォーム側が「法律の抜け穴」を理由に、削除要請への対応を遅らせるケースも指摘されている。しかし、プラットフォーム側の対策も進む。例えばSpotifyは2025年9月に偽装ポリシーを導入し、AIによるボーカルの模倣を禁止した。
一方で、ソニー傘下のディストリビューターThe Orchardは、Jorja Smithに酷似したAIボーカルの楽曲「I Run」の削除通知を行った。この楽曲は、通常の削除プロセスを回避するため、複数のディストリビューターから配信されたと報じられている。
日本のクリエイターが今、考えるべきこと
今回のAIディープフェイク問題は、日本の音楽クリエイターにとっても決して他人事ではない。自身の声やスタイルがAIによって模倣されるリスクを理解し、早期にD2C戦略やコンテンツ保護の意識を持つべきである。
プラットフォームとの契約内容を見直し、AI関連の条項や権利保護に関する規定を確認する時期に来ている。AIは強力なツールである。しかし同時に「自分の価値」を脅かす可能性も秘めている。AIを味方につけつつ、自身のブランディングや権利を守るための具体的な行動を今すぐ始めることが重要だ。
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