Spotifyが、アーティストが直接動画をアップロードできるベータ機能をローンチした。これにより、クリエイターはパフォーマンス映像などを自ら投稿し、新たな収益源を得る道が開かれる。単なる動画配信にとどまらず、リスナーのエンゲージメントを高め、既存楽曲のストリーム数も押し上げる可能性があるという。この変化が日本のクリエイターに何をもたらすのか、深掘りしていく。
Spotifyがアーティスト向け動画直接アップロードを開始
Spotifyは、Spotify for Artistsダッシュボードを通じ、アーティストがフルレングスの動画を直接アップロードできるベータ機能を導入した。対象となるのはライブパフォーマンス、スタジオセッション、カバー、公式ミュージックビデオなどである。これらはロイヤリティ発生の対象であり、チャート入りする可能性もある。
この機能は6月17日から、数万人のベータアーティストに提供が始まった。これまでの動画配信はレーベルやディストリビューター経由が主で、Spotifyは2024年3月に動画機能を一部地域でベータ導入、2025年12月には米国とカナダのプレミアムユーザーに拡大していた。しかし、アーティストが動画を自ら直接アップロードできるのは今回が初めてとなる。
今回の展開は、2023年に始まったショート動画機能「Clips」の提供終了と同時に進む。既存のClipsは残るが、アーティストプロフィール上のClipsタブは順次Videoタブへと移行する。Spotify自体がアーティストの直接アップロード機能を提供するのは今回が2度目だ。同社は2018年に音楽の直接アップロードプログラムを開始したが、2019年には終了している。
動画投稿が「リスニング」を加速させる仕組み
この新機能は、音楽動画ストリーミング分野を独占するYouTubeへのSpotifyの挑戦である。Spotifyは「動画をストリーミングすると、その後のリスニングが大幅に増える」と説明している。
具体的なデータも示された。動画視聴後3週間でその曲のストリーミングは平均64%増加する。保存、共有、プレイリスト追加の可能性も1.4倍高まるのだ。動画を観たリスナーは、そのアーティストの他のカタログ楽曲を57%多くストリーミングする傾向にある。熱心な「スーパーリスナー」では、動画視聴後3週間でストリーミングが62%増加し、1時間40分以上の追加リスニングに匹敵するという。
直接アップロードされた動画はロイヤリティ発生の対象であり、アーティストは動画自体と、それが促す追加リスニングの両方から収益を得られる。動画は「Videos For You」などのパーソナライズドプレイリストやエディトリアルプレイリスト、アーティストプロフィールなどで表示される。アップロード動画から自動的にショートフォームプレビューが生成されるのも特徴だ。
ただし、ビジュアライザー、歌詞動画、複数曲のコンサート、音楽を含まない動画は現在サポート対象外である。すでにHazlett、We Three、Bebe Rexhaといったアーティストがライブパフォーマンスや公式MVを公開している。
日本のクリエイターは「音楽を深掘りする動画」に注力せよ
今回のSpotifyの新機能は、日本のクリエイターにとってD2C(Direct-to-Consumer)戦略の新たな扉を開くものだ。ライブパフォーマンスやスタジオセッション動画を直接提供することで、ファンとのエンゲージメントを深め、既存楽曲のリスニングを促せるのは大きなメリットだ。
Spotifyのデータが示す通り、動画は単体での収益だけでなく、カタログ楽曲全体のリスニング向上に繋がる強力なフックとなる。これまでYouTubeが動画プラットフォームの主流だったが、今後はSpotify内で「音楽体験を深化させる動画」の制作に注力する価値があるだろう。高音質なライブ映像や、楽曲制作の裏側を見せるドキュメンタリー風の動画などが有効である。
この機能が本格展開されれば、音楽ストリーミングにおける動画の役割はさらに拡大する。日本のクリエイターは、自身の音楽を多角的にアピールし、ファンベースを拡大する新たなチャンスとして、この動きを注視すべきである。
参考URL:
- https://www.musicbusinessworldwide.com/spotify-opens-direct-uploads-for-music-videos-and-live-performances-in-beta/




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