音楽ストリーミング市場でAIを活用した不正行為が深刻化している。この問題に対し、米国著作権局(USCO)が本格的な調査に乗り出した。ストリーミング詐欺の手口や経済的影響、AIとの関係を公開で調査する動きは、限られたロイヤリティプールを巡る争いに新たな局面をもたらす。日本のクリエイターも無関係ではない。この調査が示す業界の未来を読み解く。
米著作権局がストリーミング詐欺の全容解明へ動く
米国著作権局(USCO)は、音楽ストリーミング詐欺に関する公開調査を開始した。2026年10月7日に連邦官報で告知されている。この動きは、共和党下院議員スコット・フィッツジェラルドからの要請を受けたものだ。
フィッツジェラルド議員は、AIがストリーミング詐欺の「触媒」となっていると指摘する。AIによって生成された作品が人間が作った作品と競合し、ロイヤリティプールを希薄化させる問題だ。不正行為は、正当な権利者への分配金を奪う明確な「盗み」だと述べている。
すでに大規模な詐欺事件も発生している。ノースカロライナ州のマイケル・スミスは、ボットアカウントを使ってAI生成曲をストリーミングし、約1000万ドル(約14.5億円)のロイヤリティを不正に取得した。彼は18ヶ月の懲役刑を受け、約800万ドルの没収を命じられている。
AI詐欺がロイヤリティプールを蝕むメカニズム
ストリーミング詐欺の「主要な害」は、ロイヤリティ収益プールの希薄化である。USCOの指摘通り、不正行為によって偽りのストリーム数が計上される。結果として、本来クリエイターに支払われるべき収益が、不当に詐欺師へと流れる構図だ。
Deezerの調査では、2025年に同プラットフォーム上のAI生成トラックの最大85%が詐欺的であった。また、デイリーアップロードの半数以上がAI生成トラックであることも判明している。AI技術の進化は、詐欺の規模を拡大させ、検出を困難にしているのだ。
USCOはロイヤリティへの影響だけでなく、二次的な害も重視している。プレイリストへの掲載順位や、アーティストがツアー計画に使うストリーミングデータへの影響もその一つだ。さらに、業界のポリシーや慣行が意図せず詐欺に寄与している可能性も調査対象としている。
日本のクリエイターが今すべき対策と心構え
米国の著作権局がストリーミング詐欺、特にAIを悪用したケースに調査を入れたことは、業界全体にとって重要な転換点だ。グローバルなストリーミング市場において、この動きは日本にも波及する。日本のクリエイターも、ロイヤリティプールの希薄化という問題から逃れられない。
私たちクリエイターは、自身の作品が不正行為に巻き込まれていないか常に監視する必要がある。不正対策ベンダーであるBeatdappのような技術活用にも注目だ。また、DSPやD2Cプラットフォームが提供する著作権管理機能や、不正検出ツールを理解し活用することが求められる。
今後は、音楽業界におけるAIの倫理的な利用範囲がより厳しく議論されるだろう。AIをクリエイティブなツールとして活用しつつ、不正利用から身を守る知識と心構えが必須となる。業界全体の公正なエコシステムを維持するため、私たち一人ひとりの意識と行動が重要である。




コメント